
優生学と人間社会
著者:米本 昌平/橳島 次郎/松原 洋子/市野川 容孝
出版社:講談社
初版が2000年と古い書籍です。現在の新書ブーム(もう過ぎているかも)の以前から、硬派の新書として講談社新書があり、大学教養レベルの学問の入り口として重宝されました。
優生学が近年になって再び脚光を帯びたのは、一つは障がい者に対する強制的な(同意の曖昧な)不妊手術の実態と重度障害者施設への無差別殺人事件でしょう。この優生思想は差別意識と切っても切れない関係にあり、社会における差別の解消のためには、これまでの歴史を知ることは重要な事だと思います。
北欧諸国が現在の福祉国家や人権を重要視する社会であると認識される以前は、決してそうではなかったと言うことをこの書籍は示しています。そして、その影にいつも戦争や紛争という物がついて回っていることを教えてくれます。
紛争の増加する現代において、この書籍を読むことで今起きていることの背景がわかると思います。やや硬い文章ですが、新書版でページ数も少ないですから、高校生あたりからでも十分に読めると思います。
自分の知らない世界を知るということを教えてくれた書籍であり、そのことは読書の醍醐味の一つです。ぜひ挑戦してみてほしい書籍の一つです。
紹介してくれたのは…
大学 教員
向井 公一